ある一日の生活から

その男は、何かに嫌気を感じていると同時に常日頃から、自分でも理解できない異様な依存心における優しさに悩まされていた。

男は郊外のマンションに一人で住んでいた。

いつからか確か数か月も前から、一切仕事をしなくなっていた。

手持ちのお金は、もう少しで底をつきそうだった。

 

そんなある日の出来事だった。

男の部屋の一室の台所のテーブルでに一枚のハガキが、無造作に置かれていた。

一枚のハガキには表面の真ん中らへんにラベルが貼られていた。

そこには今すぐお金を借りれますという黒く太字で書かれた文字がラベルの半分に映っていた。

 

普段の男の姿では、そんなうっすぺらい紙切れに興味をもたなかったのだが、その時は、何かに違和感を感じていた。

そもそもこんなハガキがどうしてこのテーブルにおかれているかも理解できなかった。

男の記憶は定かではないが、このハガキを持ち込んだ覚えもなかった。

 

時刻が日付が変わる前の、午後23時45分を時計の針が刻んだ。男は普段の日課でもある近くのコンビニに安い缶コーヒを買いに行くことにした。

玄関を出てから、マンションの階段を下りてコンビニに向かった。

男は先程の違和感が、何だったかを考えていた。

すると男の日常は普段の仕事から、今の現状迄、何も変わることがなかった。

 

早足でコンビ二に急いだ。外は住宅街で人の姿はほとんどなかった。

店内の手前まで差し掛かってくると、自動ドアが開き、女性店員が丁寧な口調で、いらっしゃいませと挨拶をした。

 

男は自分の脳裏に何かが伝わってきているのを感じた。

それは、男の生活は自分自身の許容範囲をこえた虚栄心とプライドだけが男を支配していた。

なぜこんな単純な事が今頃になってと、男はじぶんの記憶を辿っていくと、部屋で見たあのハガキから、男は恐るべき蟻地獄へ踏み出していた。

 

店内にいた男は後ろを振り返った。そこには誰もいない。

そして自分もいない。周りは、商品が並べられてきれいに陳列された姿である。

そしてあの女性店員はごくありふれた日常の生活を演じきっている。

そして男の目の前にはコンビニのレジがある。女性店員は、終始笑顔を浮かべていた。